想像してみる。

観客であふれかえる農学部グラウンド。その中には、OGやお世話になった方々、男子部の部員の方々もいる。

期待が高まる中、試合終了のホイッスルが鳴り、ア式女子のリーグ昇格が決定。グラウンドは歓喜に包まれる…



 実際は、東京大学ア式蹴球部女子の置かれている状況は厳しい。部員は現在12人と少なく、合同活動チームである文京LBレディースの大学生(お茶の水女子大など)に加わってもらって出場しているため、今年度のリーグでは昇格の権利すらない。また他大学と比べ初心者の割合が高く、上位チームとの対戦では歯が立たない。昇格圏内に入ることは夢のまた夢である。



 そんな中でも私は今シーズンの目標を、入れ替え戦圏内である「3位以上」とした。全く自身がない訳ではなかった。文京LBレディースのメンバーは経験豊富で頼もしく、未熟な部活にも関わらず入部してくれた1年生は初心者ながらみんなセンスに溢れていた。可能性はゼロではないと本気で思っていた。

 しかし現実はそう甘くはなかった。迎えた初戦、1-10で大敗。今年から入部は「サッカー推薦者のみ」となった昇格の有力候補に、手も足も出なかった。その後も大量失点での対戦が続き、ホームグラウンドでの落とせないゲームでも1点差で勝ちきれず、開幕戦から怒涛の6連敗。総失点数は22となった。もちろん順位は下から数えた方が早い。自分の認識の甘さと、もっとできることがあったのではないかという後悔を日々感じながら、一つでも順位を上げるため必死で対策を練り、練習を重ねた。そして7戦目にして初勝利を掴んだ。喜びよりも安堵の方が大きかった。連勝目指して臨んだ8試合目、相手フリーキックの際、壁に入った自分のミスで失点してしまい、その後追いつくも決勝点は奪えず引き分けに。ホーム最終戦となった先週の9試合目、多くの方が応援に来てくださりなんとしても勝ちたかったが、後半残り20分で2点差をひっくり返され鮮やかな逆転負け。悔しさに涙を流すメンバーもいた。

 ざっと振り返ってみても「3位以上」という目標達成とは程遠いシーズンであった。勝つことの大変さ、昇格の厳しさは分かっていたつもりだったが、壁は思っていた以上に高かった。



 目標の設定ミスだと言われてしまうかもしれない。現実味のない目標は意味を成さないとは思う。それでも私は、懲りずに来年も「3位以上が目標だ」と言い続けていると思う。そうしたいと思う。それは中高時代の恩師が話してくれた、夢を叶える秘訣を心に刻んでいるからだ。
【夢を叶えるの「叶」という字は、「口」という字と「十」という字でできている。これは、夢は「十分に口に出す」ことをしないと叶わないということだ。堂々と夢を語って、それに見合うだけの努力をしなさい。】
 特に根拠のない恩師の持論だが、私はこれを実践してきた。日本には言霊という概念もあることだし。すると、学校の成績はとびぬけて優秀というほどでもなく、親も最初は不安な顔をするほどだったが、「東大に入りたい」といい続けてこの大学に合格した。将来の夢を聞かれるたびに濁さずはっきり答えていたらいろいろな方からアドバイスを貰った。彼氏は欲しいと言い続けてもできないけれど、代わりに()新歓で新入生を口説きまくった結果、今までで一番多くの1年生が入部してくれ、多すぎたかと心配しながらも言い続けていた入部数目標を達成した。
 口に出すことで夢に近づく。一歩一歩は小さいかもしれないが、口に出さなければ少しも進めない。ここで宣言しておきたいと思う。来年も大学リーグの目標は「入れ替え戦圏内の3位以上」である。ただしチーム目標は代替わりした主将が決定するため、これはおそらく個人目標となる。(ただ、ここでこんなことを書いていると次の主将がプレッシャーを感じて来年の目標設定の参考にしてくれるかもしれない)

当初は人数も揃わなかったチームが、3部から2部へ昇格する。
初心者がほとんどのチームが、上のレベルのチームと互角に戦う。
強いア式女子に憧れた女子高生が、それをきっかけに受験勉強を始める。
全国に、東京大学ア式蹴球部女子の名が知れ渡る。

 いつになるかは分からないが、叶うまで口に出し続けようと思う。そして今はまだ遠い夢への小さな一歩として、目の前のリーグ最終戦、勝利で終われるよう全力で挑む。


2016関東大学女子サッカーリーグ3部最終戦は、【11/20()13:00k.o. vs東京学芸大学@東京学芸大学グラウンド】です。今年卒業される先輩方の引退試合となります。応援よろしくお願いします!
女子部3年 大坪佳夏子

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